えーと、大変申し上げにくいことではありますが、実はついこの間大絶賛したばかりの洗濯機を手放して、また別の機種に買い替えました。

4月に購入したNationalのNA-VR1000は、画期的なヒートポンプ式の乾燥機能を売りにしたドラム式洗濯機でしたが、しばらく使っているうちに問題が発生し、残念ながら使用を諦めることにしました。その問題とは「乾燥した洗濯物がくさくなる」こと。乾燥をせず、脱水までした状態で干しておけば問題ないのですが、乾燥までしてしまうと、洗濯物がなんだかブルーチーズのようなにおいを発します。使い始めて最初のうちは気がつかなかったんだけど、2, 3ヶ月したあたりから気になり始めました。

メーカーに問い合わせてみると、一応原因は判明しているそうで、「排水ホースから出る乾燥した空気が配水管内部の封水を乾燥させて飛ばしてしまうため、下水から臭いが上がってくる」ということなのだそうです。下水の配水管には内部にS字に曲がった部分があり、そこに常に水が溜まっていることで下から臭気が上がってくるのを防いでいるわけですが、この機種は排水ホースから水だけではなく乾燥した空気も排出しているため、それがヘアドライヤーのようにこの封水を蒸発させてしまうのだそうな。一応対策部品が存在していて、サービスの人が来てそれを取り付けてくれたのですが、状況は改善せず。となると原因が本当にこの分析通りなのかも疑わしい感じですが。

まぁなにしろくさいのは事実で、しかもメーカーの人から「ああ、それはね、下水の臭いが付いているのですよ」とお墨付きまでもらってしまっては、あまり使い続けようという気持ちは起こりません。そういうわけでメーカー/販売店にお願いし、返品に応じていただきました。ちなみにネットでこの機種の評判を調べてみると、におい問題に遭遇している人はほかにもいるようです。一方で、同じ機種を使っていてもまったく問題ないと言っている人もいるので、機械の個体差か、使用環境の差か、おそらく複数の要因が絡んでいるのでしょうね。洗濯物が縮まないヒートポンプ乾燥や、高温のお湯を使った洗濯など、魅力的な機能を持った洗濯機だっただけに残念です。

で、改めて購入したのはSHARPのES-HG91F。懲りずにこれまた今月出たばかりの新機種ですが、発売日前に注文してしまいました。とはいっても、この機種は型番からも想像できるように以前から発売されていたES-HG90のマイナーバージョンアップ的な製品で、ES-HG90というのはNA-VR1000を購入する際に比較検討した自分の中ではいわばNA-VR1000の対抗馬。そういう意味では順当な機種選定です。

で、この新しいES-HG91Fはどうか。結論から言うと今のところ問題なし。でも(今回のこともあるし)もう少し長期的に使ってみないと最終的な評価はしづらい、といったところです。

そもそも今回NA-VR1000や、ES-HG91Fといった新しい機種に買い換えようとした動機、つまり、それまで使っていたSHARPのES-WD741で感じていた問題を振り返ってみると、

  1. ドラムの中で洗濯物が偏った状態では、ドラムが暴れて脱水の途中で停止し、そこで洗濯を途中放棄してしまう。
  2. 乾燥フィルターが詰まるとセンサーの働きが鈍り、完全に乾ききっていないのに乾燥をやめてしまう(そして乾燥フィルターを掃除するにはサービスの人を呼んで有料でやってもらう必要がある)。

の2点でした。NA-VR1000では、これらの問題は、それぞれ次のように解決されていました。

  1. 洗濯物が偏っていても、ドラムがあまり暴れないように制御されている。具体的にどうやっているのかはよく分からないけど、動きを観察していると、どうやらドラムにバラストがあって、洗濯物が寄っているのと反対側のタンクに水を入れ、ドラムの重心を中央に近づけるようなことをしているように見えます(分解したわけではないし、あくまでこれは想像ですが)。
  2. 乾燥フィルターが掃除しやすい場所に出ていて、自分で掃除できる。ただし、説明書には「必ず毎回掃除するように」としつこく書かれており、実際、一回乾燥するたびにかなりのゴミがここに溜まる。

一方のES-HG91Fでは、

  1. 洗濯物が偏ってドラムが暴れても、そのまま動き続けられるような構造になっている。具体的には、洗濯機本体の中でドラムが浮いている構造で、ドラムが暴れてもそれが洗濯機全体の振動にならないように工夫されている。
  2. 乾燥フィルターが自動的に掃除されるようになっている。

という対応。両社まったく異なるアプローチで面白いです。

ドラムを浮かせる構造はSHARPがES-HG90から始めた新機構で、SHARP独自のものです。実際に動きを見ていると、「エー、こんなに暴れるの?」とびっくりするぐらいドラムが洗濯機の中でぶれているのですが、そのままかまわず運転を続けます。少なくともES-WD741ではちょっとドラムが暴れると動作を止めていたのに、ES-HG91Fではドラム暴れに対する許容度が格段に向上しています。

ただし、ずっと見張っているとやはりドラムが暴れすぎていったん回転を止め、再度やり直してみるような動作をすることがまれにあります。ES-WD741のときはそれを何度か繰り返して最終的にエラーで止まってしまっていたのに対し、ES-HG91Fでは、やり直しているうちにうまくいって、結果的に成功しているようにも見えます。まぁ結果的に成功するのはドラム暴れに対する許容度が上がっているからだろうし、少なくとも今のところ何度やり直してもうまく行かずそのまま洗濯そのものを諦めてしまうというようなことは一度も起こっていないので、ES-HG91FではES-WD741に対して「改善している」ということは断言してもいいと思います。ただし「根治している」と評価するためにはもう少し長い期間使ってみる必要があるでしょう。

個人的には「ドラムが暴れたら暴れなくなるまでやり直す(ただし暴れに対する許容度は高める)」というSHARPのアプローチよりも、ドラム暴れを起こさない方向に制御するNationalの方式の方が現時点では優れているような気がします。「失敗したらやり直し」方式だと、最初に表示される予想所要時間が勝手にずるずると延びていくという問題もあります。ただ、暴れを抑えるのではなく暴れを許すという発想は他社にはないSHARPの特徴でもあるので、SHARPにはもう少しこの方針を追求して欲しい気もします。

乾燥フィルターを自動的に掃除する仕組みはES-HG91Fの新機能です。つまり、SHARPの直前の機種、ES-HG90には存在していなかった新しい機構です。ES-HG90を使ったことがないので正確なことは分かりませんが、SHARPもES-WD741よりあとの機種で、乾燥フィルターをユーザーが自分で掃除できるような構造にはしていたようです。NA-VR1000の乾燥フィルターを見る限り、一回乾燥しただけでかなりのゴミが溜まるので、それを掃除できないで詰まるに任せておくというのはやはり設計上の問題だったと思います。で、ユーザーが自分で掃除できるようにしたのはいいものの、やはり毎回掃除する必要があるとなると結構面倒なんですよね。そこで、さらに一歩進めてフィルターの掃除を自動化してやろうというのがES-HG91Fです。

とはいっても、正直この機能がちゃんと働いているのかどうかは今のところ確かめられていません。ユーザーの目が届くところに乾燥フィルターがない、という意味ではES-WD741の当時とまったく同じ状況なもので。裏でちゃんと掃除してくれているのか、それとも詰まりっぱなしになっているのか、なんとも言えない。また、自動で掃除してくれるのはありがたいのですが、NA-VR1000でのあのゴミの量を見ると、自動で掃除して出てきたそのゴミはどこに行ってしまうのかも微妙に気になります。そのまま排水ホースから流して下水管が詰まったりしないのだろうか。。。乾燥フィルターに問題が生じて乾燥能力が落ちたりするのもしばらく使った後の話ですし、自動フィルター掃除の弊害(そういうものがあるとして)が見えてくるのにもしばらく時間がかかると思うので、この点もすぐには評価が下せません。

そういうわけでなんとも煮え切らないレポートになってしまいましたが、NA-VR1000に(少なくとも我が家では)問題があって返品した、ということはなるべく早く書いておいたほうがいいだろうなぁと思ったもので。ES-HG91Fは良くも悪くもES-WD741の正常進化版で、問題に確実に手が当たっているという意味で高く評価できますが、それ以上に何か魅力的な付加機能があるかというとそこはちょっと弱い。その意味で、ヒートポンプ乾燥や温水洗濯機能を持つNA-VR1000は本当に惜しかったです。ちなみにヒートポンプ乾燥方式といえばNA-VR1000のあとに東芝も同方式のドラム式洗濯機を発売しています。が、もしかしたら今回のにおい問題はまだ未成熟なヒートポンプ乾燥方式に原因があるかもしれないと考え、東芝の当該機種は念のため避けることにしました。あれはあれで興味あるんだけどなぁ。